いや、なにしろ第1試合からスペシャルマッチの第10試合まで、これほどクロスゲームが続く大会というのも滅多にないでしょう。
まあ敢えて惜しかった点を挙げるなら、若林太郎さんのリングアナウンスは噛み噛みだったよなーとか(それはそれで面白かったが)、石毛選手の高速飛びつき三角は極まってれば神だったよなーとか、鶴屋選手の応援に来ていた、お子さんはもう少し静かにしてほしかったよなーとか、ジェフが入場の時につけてた露店で300円で買ったような安っぽいお面は一体なんの意味があったのかなーとか(しかも入場してすぐに脱いじゃうし)、ビル・クーパーは鶴屋戦の最後の最後でチョーク取ってれば文句なしだったよなーとか、肌イ朗は修斗の時と同じ宇宙人コスチュームで入場したけど、どうせならもう少し趣向を変えてほしかったよなーとか(まあ予算や準備期間の問題もあったのかな)、客席が暗くて試合のメモがまったく取れなかったよなーとか(これは個人的なことだろ)、ハマジーニョ氏はそもそもなんであんなに太っちゃったんだろうなーとか(これは余計なお世話だろ笑)、いろいろあるにはあるけど、それらを差っ引いてもホントいい大会でしたよ。
パラゴン勢については後述するとして、まずトイカツとバレヨシ(なんかヤマヨシ(山本宜久)みたいなニックネームで面白いから、これからはバレヨシと呼ぶことにした)の試合が良かった。この二人、何気にもう4回目の対決になるけど(※修斗でトイカツの1勝。グラップリングでバレヨシの2勝)、これまでで最もエキサイティングな試合じゃないかな。
とにかくバレヨシは相変わらず下からの仕掛けが速い。ハーフからフルガードに戻した際の腕十字のスピードはすごかった。そこで勝負あったかに見えたが、なんとか逃れたトイカツ。負けじと下から足関狙いにいってトップを奪った流れで今度はお返しの腕十字!入ったか?しかしここは回転して最大のピンチを脱出したバレヨシ。これぞグラップリングの醍醐味といった感じの攻防に場内も大歓声。
ここまでお互いアドバンは取ったものの明確なポイントはなし。しかしバレヨシは終盤お得意のバックを取るムーブで4P先取。なんとか脱出してポイントを挽回したいトイカツだが、四の字にクロスさせたバレヨシの足のフックは磐石で結局このポイントを守りきって勝利。負けはしたもののトイカツはやっぱり巧いよなー。バレヨシが腕を伸ばされるなんてこれまで見たことないもん。
レーヴィ級1回戦の石毛と鶴屋も良かったねー。開始からスタンドで様子見が続き、これはちょっと寒い試合になるかもと思い始めたその刹那、石毛が電光石火の飛びつき三角!いやーこれは本当に惜しかった。タイミング・スピード・足の絞め付け具合ともに申し分ないと思ったんだけどなー。あれが極まってれば石毛は神だったよ。その後はガードの攻防でなかなか展開が生まれなかったが、終盤に鶴屋がデラヒーバ・ガードからバックを奪って、その流れかなにかで(記憶いい加減。違うかも)、鶴屋がテイクダウンだかリバーサルを決めて、2Pを奪ってなんとか逃げ切った形に。序盤・中盤やや間延びした感はあるが、好勝負でした。
ワンマッチの徹肌イ朗と吾妻エメルソンも良い!エメルソンはやっぱり良いねー。(多分)ペケーニョ譲りのギロチンチョークの入り方が実にカッコ良い。常に何かを狙ってるオーラをビンビン感じるので一瞬足りとも見逃せないんだよなー。スタンドでバランスを崩した際に、肌い朗にバックを取られてスリーパーを決められたけど、やはり注目に値するグラップラーという評価に変わりはなし。一瞬のチャンスをしっかりモノにした肌い朗も素晴らしい。
そしてビル&ジェフのパラゴンコンビ。正直なところ結果を出してホっとした。梅村選手も渡辺選手も国内有数のトップ柔術家だし、1回戦で姿を消す可能性もあっただけに不安もそこそこあったのですよ。特にビルはまだ紫だし、先週もジェフ・モンソンとの30分に及ぶマラソンマッチ(TDポイントで負け)を終えたばかりでコンディション的にも心配だった。彼については、実は映像自体もそんなに見たことがないから期待と不安で半々といったところ。
で、実際のところ結構危なかった。開始直後は引き込んだ渡辺選手相手に側転パスからサイドにつきかけアドバンをもらう幸先のいいスタートをきったけど、その後は渡辺選手が三角・オモプラッタやバタフライガードから二度三度ビルの体を宙に浮かすなどテクニシャンぶりを存分に発揮。中盤にスタンドから腕を引き落としてのテイクダウン(いわゆるアーム・ドラッグ)でポイントを取って何とか勝利を収めたもののかなりヤバかった。
決勝の鶴屋戦もタックル切られまくりで危なかった。結構バカ正直にテイクダウンに行くんだよな。鶴屋選手はレスリングやってたしそんな簡単に倒れないって。で、タックル潰されてバックに回られてアドバン取られたり、序盤~中盤は劣勢。自らハーフガードになってもジェフほどそこから展開は作れない。
あーやばい、このままアドバン差で負けるかなーと思ったらここで神が降りてきた。ガードから脇を差してそのまま起き上るとテイクダウン狙い。鶴屋も懸命に堪えるがビルが外掛けで遂にテイクダウンの2P奪取。そこからパス狙いに的を絞ったビルがハーフから首を殺して足を抜きにかかると、たまらず背中を見せた鶴屋のバックを取り場外際で足をフックさせ4P追加。なおもスリーパーで極めにかかるが、(鶴屋選手の)小さいお子さんの「がんばれ~!」の声が届いたらしく(ホントかよ!)惜しくも1本勝ちはならず。
ビルは全体的に見るとやや物足りなかったが最後の最後でなんとか格好がついたかな、と。まあ、でもまだニキビ顔の18歳の選手だからね・・・・。レーヴィ契約なのに体重も70kgだったし、線も細いわで、やっぱりまだ身体が出来てない感じはしたな。まあ、なにはともあれ最高の結果を出して良かったね。
ジェフ・グローバーは期待以上の出来。変幻自在という言葉が本当に相応しいほど素晴らしいガードワークを発揮した。スペシャルマッチのクーパー戦まで含めると、この日、一体何回スイープしただろう?
初戦の梅村戦はスタンドでの静かな立ち上がりから、ジェフが引き込んでオモプラッタで上下を入れ替えると思わずどよめく場内。これで掴みは完璧にOK。この後はお互いにスイープを奪い合う素晴らしい技術戦。しかしジェフが今度はガードから巧みに体をズラしてバックを奪う十八番のムーブから喉元に前腕をこじ入れると梅村はたまらずタップ。うひゃー!これって映像で見たやつとまったく同じ動きだよ。やっぱジェフはスゲェや。
そして決勝のバレヨシ戦。アメリカ柔術界の軽量級を代表するガード野郎対決だ。この試合も先に引き込んだジェフがハーフガードからスイープして先制。バレヨシもガードポジションこそ俺の土俵だと言わんばかりにスイープを決めるとポイントをイーブンに。負けじと今度はジェフが下から隙を突き、起き上がって押し倒すと再び2Pリード。その後もお互いにスイープを取り合うとポイントは6-4でジェフがリード。しかし驚異的な粘りを見せるバレヨシが残り30秒でバックを取りジェフは最大のピンチ。あと1本足をフックさせれば4Pで逆転出来るというポイント制ならではの攻防に息を呑む場内。しかし、ここで惜しくもタイムアップでペナ級チャンピオンの栄冠はジェフ・グローバーの手に。この素晴らしいシーソーゲームに勝者も敗者も関係なく場内は惜しみない拍手。本日のベストバウトでした。
非常に拮抗した試合だったので、世代交代というにはまだ早すぎるが、ジェフにとっては今まで倒した選手の中で一番のビッグネーム。この試合を制した意味は、日本ではイマイチ伝わりにくいが、アメリカのグラップリング界では非常に大きな意味を持つ1戦だったと言えるのではないか。やーいやーい、歴史の当事者になれなかったアメリカ人ざまーみろー!ってオレは子供かよ。
この後、ビル・クーパーがレーヴィ級の優勝を決めて、ジェフとビルがマイクを持ち挨拶。ジェフは「こんな素晴らしい大会に招いていだいて本当に感謝しています。ウィー・ラブ・ジャパン!」とかそんな感じの謝辞。つーかあんま覚えてないや(笑)。
ビルは「日本大好きです。皆さんの声援に大きなバイブスを感じました」とか窪塚さんみたいな挨拶。ここで大会もエンディングかと思われたが、もう一度ジェフがマイクを持ち「次は私たちが直接対決して是非NO-GIの真髄をお見せします」と、まったく予想だにしていなかったサプライズを提供!う~ん、さすがアメリカ人。君たちは若いのにエンターテイメントというものを解っているね。ここで10分間の休憩を挟み、ハマジーニョ氏の「これはあくまでリアルファイトです」という説明を受けてから特別試合のグラウンドファイナル戦開始。
細かい試合内容はメモも取ってないしはっきり言って覚えてない。いや正確にいうと動きがあまりにも多すぎるので覚えられないのです。さながら身体を使った肉体芸術のように動くことを止めない二人に歓声とため息が交錯する場内。大袈裟な話でもなんでもなくグラップリングという競技の無限の可能性を感じた本当に素晴らしい試合でした。
そしてビルとジェフは噂のヒクソン・グレイシー主催のブドーチャレンジに出場する為に早くも帰国したそうだ。昨日3試合したばかりだというのに、また試合かよ!まったくクレイジーな連中である。だかしかし、最もクレイジーなのはヤマンバのような白髪ヘアスタイルの高島学氏だという結論で、この観戦記を締めさせていただこう(笑)。
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